どのような症状がでるの?

SMAの病型1)

SMAは、発症年齢と最高到達運動機能のレベルによって、0~Ⅳ型の5つの病型に分類されます。発症年齢が低いほど重症な場合が多いです。進行していく病気で、病型によって進行の程度とスピードは異なります。
患者さんが持っているSMN2遺伝子のコピー数が多いほど、SMAの重症度は軽い傾向があります。そのため、SMN2遺伝子のコピー数から患者さんのおおよその重症度や進行を予測できると考えられるようになりました。
新生児スクリーニングなどでSMAと診断された未発症の患者さんに対しては、発症前に治療を始めることで、SMN2遺伝子のコピー数から予測される発症や進行を抑えることが目指されています。

横にスライドするとご覧いただけます

出典2)-4)より改変

SMAの症状 1)5)-8)

筋力低下を中心に、SMAそのものの症状と、SMAがもとになって引き起こされる合併症の症状がみられます。
症状とその程度は、病型や患者さんごとにさまざまです。

SMAそのものの症状

支えなしで座れない、うまく歩けないといった運動機能に関する症状のほか、手や足などに力が入らず動かしにくい、舌や指先が細かく震える、泣き声が弱いといった症状があらわれることがあります。

<イメージ図>
SMAがもとで引き起こされる症状(合併症)

特に重要なものとして、呼吸に関する症状、食べることや飲み込むことに関する症状、体の動きや姿勢に関する症状があります。

<イメージ図>

病型別の症状 1)5)6)9)

Ⅰ型でみられる症状の例
  • 首のすわりが遅い、支えなしで座れないなど成長に合わせた動きがみられない
  • 体が柔らかい。体がふにゃふにゃしている
    [フロッピーインファント、フロッピー、筋緊張低下(きんきんちょうていか)、低緊張(ていきんちょう) など]
  • 寝返りをしないなど体の動きが少ない
  • 舌や指先が細かく震える
  • 息を吸うときに胸がへこんで、おなかがふくらみ、息を吐くときはその逆で胸がふくらんで、おなかがへこむ「シーソー呼吸」がみられる
  • 母乳やミルクを吸う力が弱く、うまく飲めない
  • 泣き声が弱い

出典10)より作成

Ⅱ型でみられる症状の例
  • 支えなしで立てない、または歩けない
  • 座った姿勢で背中が丸い
  • 指先が細かく震える
Ⅲ型でみられる症状の例
  • 支えなしで歩けるが、階段を上れない
  • うまく歩けず転びやすい
  • 走るのが遅い
  • 腕が上がりづらい
  • つまさきが外側に向いて、膝はX脚になる
  • 以前は歩けていたのに歩けなくなる
Ⅳ型でみられる症状の例

次第に筋力が低下し、日常生活に大きな支障はなくても、以下の症状があらわれることがあります。

  • 支えなしに立ち上がりづらい、または歩きづらい
  • うまく歩けず転びやすい
  • 階段の上り下りに手すりが必要
  • 以前は持つことができた物が持てない
  • ペットボトルのふたが開けづらい
  • 太ももなど体の力が弱くなってくる
  • 体の一部が細かく震える
  • ちょっとした段差につまずきやすい

SMAのタイプ 1)

治療薬発売以降、治療によって最高到達運動機能レベルが変化してきています。患者さんの症状や運動機能レベルに基づき、Non-Sitter、Sitter、Walkerの3つのタイプに分けて、医学的な管理や合併症の管理がなされるようになってきています。

Non-Sitter
Sitter
Walker

1)脊髄性筋萎縮症(SMA)診療の⼿引き編集委員会 編.脊髄性筋萎縮症(SMA)診療の⼿引き.メディカルレビュー社; 2022.
2)Kaneko K, et al. Brain Dev. 2017; 39: 763-73.
3)厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業).神経変性疾患領域における調査研究班 平成29(2017)年度(分担)研究報告書.
4)Butchbach ME. Front Mol Biosci. 2016; 3: 7.
5)難病情報センター.脊髄性筋萎縮症(指定難病3)(令和5年11月). https://www.nanbyou.or.jp/entry/135,(2024年9月5日閲覧)
6)Wang CH, et al. J Child Neurol. 2007; 22: 1027-49.
7)Hoffman J. Dtsch Z Nervenheilkd. 1897; 10: 292-320.
8)Salort-Campana E, Quijano-Roy S. Arch Pediatr. 2020; 27: 7S23-8.
9)和田郁雄,他. Jpn J Rehabil Med. 2008; 45: 720-7.
10)内山聖 監.標準小児科学.第8版.医学書院; 2013. p.674.

総合監修
東京女子医科大学ゲノム診療科 特任教授
齋藤 加代子 先生

1976年 東京女子医科大学医学部卒、80年 同大学院臨床医学系小児科学修了。東京女子医科大学小児科学教室助手、同教室講師、助教授を経て、99年 教授。2001年 東京女子医科大学大学院先端生命医科学系専攻遺伝子医学分野教授を兼任、04年 同附属遺伝子医療センター教授専任・所長。16年 同副学長、17年より同名誉教授(現職)、同附属遺伝子医療センター特任教授・所長。東京女子医科大学臨床ゲノムセンター所長、同病院遺伝子医療センターゲノム診療科特任教授を経て、21年4月より同ゲノム診療科特任教授(現職)。専門は遺伝医学、小児神経学、小児科学。

プロフィールを見る

2024年9月改訂