ごはんづくりのポイント
「かみにくい」「飲み込みにくい」「むせやすい」食材と食べやすくする工夫
食材、食感や味付けによって「かみやすさ」「飲み込みやすさ」なども違います。むせやすいなど気をつけたい食材や、咀しゃくや飲み込みがしやすい食材、それを助ける食材や調理法を知っているだけで、患者さんのための食事づくりがぐっと楽になります。
参考:脊髄性筋萎縮症(SMA)診療の⼿引き編集委員会 編.脊髄性筋萎縮症(SMA)診療の⼿引き.メディカルレビュー社; 2022.
かみにくい 飲み込みにくい むせやすい
気をつけたい食材・食感・味付け
誤嚥・誤嚥性肺炎を防ぐために、食材、食感、味付けに配慮する必要があります。「飲み込みにくい」「むせやすい」食材はさけるか、飲み込みを助ける食品(ソース)と組み合わせたり、とろみをつけたりするなど調理法を工夫しましょう。
- ばらばら
- 例
ひき肉、おから、寒天、ナッツなど
口の中でばらけて、塊をつくりにくい。
- ぱさぱさ
- 例
パン、カステラなど
水分がないので口の中でばらけたり、水分を吸ってべたべたしたりする。
- ぺらぺら
- 例
のり、海藻、ウエハース、野菜の皮など
口やのどに張り付き、飲み込みにくく、口の中に残りやすい。
- さらさら
- 例
飲み物、スープやみそ汁
あっという間にのどに落ちていくのでむせやすく、誤嚥の原因になる。
- こなこな
- 例
きなこ、ビスケットなど
むせやすく、口の水分と混ざって張り付きやすい。
- じゅわじゅわ
- 例
高野豆腐、がんもどき、果物など
かむと液体が出る食品は、液体と固形物が一緒に口の中にあるので飲み込むのが難しい。
- しゃきしゃき
- 例
レタスやキャベツなどの生野菜
繊維が口の中に残りやすく、飲み込みにくい。
- すっぱい・
からい - 例
レモン、酢、とうがらし、わさび、からしなど
酸味や辛味が強いものはむせやすい。
食材の選び方
「かみやすい」「飲み込みやすい」食材選びのポイントです。やわらかくするなど調理法を工夫すれば、さらに食べやすくなります。
- 肉 編
良質なたんぱく質を含むので積極的に取り入れたい食材。種類や部位の選び方がポイント。
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食べやすい
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豚肉はバラ肉、牛肉は霜降り肉など、脂身の多い肉は火を通してもやわらかい。
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食べにくい
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鶏ささ身やむね肉など脂質が少ないものは、火を通すとかたくなったり、パサついたりしやすい。ひき肉は口の中でばらけやすいので、よく練るなどの工夫が必要。
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- 魚 編
DHAやEPAなど良質な脂質や、ビタミンD、カルシウムなどのミネラルが補える。調理法を工夫するのがポイント。
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食べやすい
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まぐろ(特にトロ)、あまえび、いくら、ホタテ貝柱のお刺身はやわらかくて食べやすい。まぐろやサーモンのすき身もおすすめ。煮魚などの煮物料理は、身がしっとりやわらかくなるので取り入れやすい。
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食べにくい
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たこ、いかなどの軟体類のお刺身は、そのままだとかみ切りにくいので注意が必要。まぐろやかつおなど大型魚は、焼くとかたくなるので生で食べるのがおすすめ。
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- 野菜 編
ビタミンや食物繊維を含むので意識的に取り入れたい。生のままだと繊維が口の中に残りやすいので、切り方や加熱調理がポイント。
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食べやすい
-
かぶ、大根など水分が多い野菜は、火を通すとやわらかくなるので取り入れやすい。野菜の繊維に逆らって切るのがポイント。
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食べにくい
-
加熱してもやわらかくなりにくいごぼうなどは、かみ切りにくい。枝豆、トマト、なすなど、皮が口の中に残りやすい野菜はむく。にらなどの葉野菜は大きいままだと口の中に張り付きやすいので、細かく刻む。
-
取り入れるだけで簡単
飲み込みを助ける便利食材
もともとそれ自体にとろみがある食材は、とろみ調整食品の代わりになって飲み込みを助け、片栗粉などでとろみをつける手間が省けます。
とろみ調整食品の代わりになる食材
- 温泉卵
- コンビニでも手に入り、たんぱく質が摂れる。
- 絹ごし豆腐
- 加熱せずにそのまま食べられ、たんぱく質やミネラルが摂れる。
- ヨーグルト、
クリームチーズ、
アイスクリーム - カルシウムが摂れ、そのままでも補食にもなる。
- バナナ、
アボカド、とろろ - 食物繊維やカリウム、ビタミンなども摂れ、エネルギーアップにもなる。
- マヨネーズ、
ケチャップ、ジャム、
ピーナッツバター
(粒なし) - かけたり、のせたりするだけなので手軽。エネルギーアップになる。
「体重を減らさない」ための食事づくりの工夫
体重減少は、筋力低下や免疫力が低下して感染症のリスクが高まるだけでなく、症状を悪化させる可能性があります。摂食・嚥下機能が低下すると、食事量を確保するのが難しくなるので、少量でエネルギーを確保することが大切です。
参考:脊髄性筋萎縮症(SMA)診療の⼿引き編集委員会 編.脊髄性筋萎縮症(SMA)診療の⼿引き.メディカルレビュー社; 2022.
【導入】摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスが大切
エネルギーを確保する食事の工夫
①主食+主菜をそろえる
- 嚥下に配慮すると、おかゆやうどんなど炭水化物がメインの主食に偏りがちに。肉や魚、卵など主菜(メイン)料理を取り入れることを意識すると自然とエネルギーが確保でき、たんぱく質も摂れる。
2品取るのが難しい場合は、丼風の料理や、カレーなどルウをかける料理はエネルギーが確保しやすい。
②おやつを上手に取り入れる
-
例アイスクリーム、水ようかん、プリン、ロールケーキ
- 食事量が減ると朝昼晩の3食だけでエネルギーを確保するのが難しくなるので、おやつなど間食を取り入れるのも1つの手。⾷べたいときに⾷べられるように、⻑期保存できるものを用意しておくのもポイント。
③調味料やソースを上⼿に取り⼊れる
-
例マヨネーズ、ソース、ケチャップ、バター、ジャム
- ちょっとかけるなど、料理に使うだけで食事のカサを増やさずにエネルギーアップに。とろみのあるマヨネーズなどは飲み込みも助けるので一石二鳥。
④食欲がないときでも食べられるものを見つける
-
例バナナ、冷凍マンゴー、ヨーグルト、ゼリー、アイスクリーム
- 食欲がないときでも食べやすいものを見つけておくことが大切。さっぱりと食べられるヨーグルトや、解凍するととろっとやわらかくなる冷凍マンゴーは、飲み込みやすくて安心。ゼリーやアイスクリームを常備しておくのもおすすめ。
⑤栄養補助食品も活用する
- 食事量が取れないときは、ドラッグストアなどでも手に入るドリンク類や、ゼリーやムースタイプの少量でエネルギーを確保できる栄養補助食品も取り入れる。
参考:厚⽣労働省.e-ヘルスネット.肥満と健康. https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-001.html,(2023年3⽉23⽇閲覧)
|監修|株式会社おいしい健康 管理栄養士
2024年11月改訂